■第4回 「虎は9ミリ・パラベラムの夢を見るか?」

これは虎の私物。光るセンスが、さすが!違いのわかる男。
 自分自身の体験から言えば、撃ち味が豪快なのは自動火器だが奥が深くまた飽きが来ないのは拳銃、ハンドガンだ。射撃はハンドガンに始まりハンドガンに終る……。のっけから、またもや拳銃ネタでご機嫌を伺います。 「砂漠の虎」こと、アンドリュー・バルトフェルド。ザフト軍に籍を置く前は、その界ではつとに知られた広告心理学者にして、振動工学の権威(というのは、本編では語られなかった裏設定。元来、プラント社会には専業の職業軍人は存在していなかったので、年いったザフトの皆さんにはそれぞれ、前職があるなりよ)。このバルトフェルドが、本編第19話でキラとカガリに突き付けていたハンドガンが今回のお題です。
 どことなく、現代オーストリアはグロック社の製品に似ているこの銃。こりゃあザフトの制式品ではなく、虎君の私物ですな。察するに、センサティック・マテリアル(つまりは工業用プラスティック)を多用したモデルということだ。そも、拳銃というのは機能においてはすでに成熟してしまった工業製品。現実のマーケットでは、各銃器メーカーともコスメチック・チェンジ、つまり外っ面だけのお化粧直しによってなんとか小火器の売り上げを維持しているのが現実。標的(人体)を破壊するという機能の一点においては、90年近く前に米軍制式採用になったコルト・ガバメントも、現用のベレッタM9も何ら変わりはないわけで、発火方式や給弾方式は完成の域に達しておりますわな。

コーヒーを沸かすその眼差しは、虎そのもの。
メーカーさんがやっているのは、この工業的には進化のドン詰まりにある機器に、照準支援のための光学デバイスを装着したり、暴発防止のためのID認証デバイスを組み込んだりということで、敵を殺すという基本性能にはあんまり寄与しないことの方が多かったりする。次のブレークスルーは弾丸のケースレス化や、弾頭のインテリジェント化になるのだろうが、そりゃあまだまだ先のこと(たぶん……)であります。ベレッタM9の機能は認める、でもいざというとき、戦場で信頼できる相棒はやっぱりコルトの45口径だ、ってなわけだ。シンプル・イズ・ベスト。いまだに、前世紀初めに誕生したコルト・ガバメントが愛好される所以。
 銃器の好みというのは、その人物の戦闘哲学の反映。どんな銃器を選ぶかであな恐ろしや、戦いに臨む姿勢がわかってしまう。

こう見えても広告心理学者にして、振動工学の権威なのです。
ほら、アスランのよくわからない(泣)銃器の趣味と比べたら、虎君の趣味のよさは一目瞭然(当社比)だやな。ちなみに私の場合、ガバメントは好きだけど残念ながらちゃんと撃ったことがないので、実際に取り扱った(合法的な)経験からとりあえずはトカレフ(中国名54式手槍)を選びます。あれは信頼性、頑丈さ、撃ちやすさ、威力、精度、どれをとっても軍用拳銃として一級品でござんした。いやそれにしても、アンドリュー・バルトフェルド……まったく惜しい人物を亡くしたものだと……はっ!? このコーヒーの香りはっ???
■著者プロフィール・森田 繁(もりた しげる)■
スタジオぬえ所属。学生時代に『ガンダムセンチュリー』の編集に参加し、そのまま業界入り。『超時空要塞マクロス』を皮切りに様々なアニメーション、実写、ゲームなどの企画に携わる。時には小説も書く。『∀ガンダム』で設定考証、『ガンダムSEED』では特殊設定と脚本を担当。