スペシャルPV『PHASE-IMPULSE』対談
■福田己津央(絵コンテ)×重田智(演出)×佐藤浩一郎(CGディレクター)

■次のステップを目指して
―今回のPVの中でお気に入りのカットはありますか?
福田
 どれかなあ。全部かもしれないし、全部ではないかもしれない。1つ1つのカットで見れば見栄えもあるし、それなりにいいとは思ってるけど。実はもっと、もっと上の方を目指しているので、今回はあえて「これがいい!」とはいうのはなし。
重田
 コンテを切ってるときにはあったんですか?
福田
 ないですね。まずテーマを出して絞っていって、リズムにあわせて切っていく。いわゆる捨てカットがないので、どれが好きとかどれが嫌いとか言われると、とっても困る。全部同じ重さで大事。
重田
 僕もわからないなぁ。作ってる人が大変だったろうと思うのはたくさんあるんだけど、お気に入りとは違いますからね。あえて言うなら、合体とかチャンバラなどのカットかな。最初から最後までずっと動いているようなカットはいろんなスタッフの苦労が伝わってくるという意味では感慨深いです。あと冒頭の格納庫でのインパルスの止め絵のカットは「CGで作ったMS」として世の中に出しても恥ずかしくないような描き下ろしカットとしても使えるんじゃないかな。CGっぽすぎずアニメすぎず、いい線いってると思いますよ。
佐藤
 「全てが大事だ」っていう、この流れでいうのは言いづらいですけど、ひとつだけ言ってもいいですか?(笑) 私はデストロイのシーンが好きで、両手の指先から発射されるビームをクネクネ動かしてみたりとか、廃墟の中で爆発が起きているとか、雰囲気としてすごく好きですね。

▲佐藤さんお気に入りのシーン。怪獣映画のような迫力あるシーンだ。
中央に吹っ飛んでくるインパルスの投げ捨てられたシールドにも注目。
福田
 デストロイはTVの時から、こういうビームの動きを考えていたんですよ。
重田
 TVシリーズであれを手で描けと言う方が間違えてますよ(笑)。
佐藤
 監督が当初考えていたビームの動きは再現することができました。巨大MSとガチンコで戦っているところを見上げたような人間視点もおもしろいなと思って。「今後もやってみたい」という意味で、このカットはとても気に入っています。
―このデストロイだけは、3DCGではないのですね。
福田
 デストロイはあまり俊敏に動くタイプではありませんし、あえていえば背景に近い存在です。また、ここは作画したメカと3Dのメカが一緒の画面に出たときに、どの程度違和感あるかという検証もしてみたかったんです。
佐藤
 デストロイはフラットな絵にならないよう、地面の炎の照り返しをグラデーションで与えたりしてCGとなじませています。私はSEED世界においてCGが作画にとって代わる存在だとは思ってなくて、効率化であったりプラスアルファだったりという部分で、縁の下の力持ちとして間に入らせてもらえれば、と考えています。
ですので、手描きのMSとCGの混在したカットは、良いテストケースになりました。
―元の映像は、通常よりも大きなサイズで作られていますね。
佐藤
 はい。ハイビジョンサイズで制作しています。視聴者の方に、いつかは元の大きいサイズで見ていただける機会があるといいなと思っています。
福田
 今回は携帯電話とか小さい画面で見ることが多いですが、僕らはそれを目的にして作っているわけではありません。いろんな可能性を考えていますので、大きいサイズのモニターでの視聴に耐え得ることを前提に画像の密度や解像度も考えて作っています。
■SEEDはまだまだ進化し続ける!
―最後に、今回のまとめをお願いします。
福田
 何度も言いましたが、今回は試験的な意味を兼ねていたので、全てのカットそれぞれが持っている意味あいが違う。CGスタッフをいじめているわけではないのですが、わざと各カットで同じ方法論がとれないように作りましたね。
重田
 意地悪だよね。(笑)
佐藤
いえいえ、シークエンスごとにハードルをたくさん設けていただいたので、その点はやりがいがありました。全部に全力投球しなきゃいけないので大変でしたが。
福田
 すべてが次に向うための課題です。自分たちの中のハードルというわけです。
佐藤
 監督からは先陣切って目指す目的地を提示してもらっているので、ついていく側としては非常にやりやすかったですね。技術や表現方法が進化していくなかで、監督も常にアンテナを張り巡らせていらっしゃって、今回CGという表現技術に積極的に取り組んでくれたのがうれしかったです。重田さんも別分野でありながら、テクニカルな面でもいろいろなアドバイスをいただきました。おふたりとも頂上についたときには次の山を目指したくなるような人なので、『SEED』の映像は今後も進化し続けるんじゃないでしょうか
重田
 何だかすごく褒められていますよ、監督。
福田
 言ってくれるなぁ。
佐藤
 言わせてください(笑)。
福田
 僕らは比較的後ろ向きなので(笑)。
佐藤
 変にベタ褒めするわけじゃないですけど、「自分がやりたかったことをここまでやれた」という状況って、なかなか巡り合えないものなんですよ。やりきれなかった悔しさと課題点ばかり残ってしまう。でも今回のPVは監督に自由にやらせていただいて、重田さんにたくさんのご意見をいただいて、すごく勉強になりましたし、スタッフにも恵まれました。参加できてすごくよかったなと思える作品でした。
(6月中旬、サンライズ本社にて)
 今回の対談は、CGによる映像制作にポイントがおかれましたが、平井氏の新規作画によるメインキャラクター登場カット(8カット)にも注目です!対談にも出てきたデュランダルのカットのように、キャラのイメージカットには、どんな意味が込められているのか、思いを馳せつつ、しっかりご覧くださいね。「Ignited」の軽快なリズムの中で、テンポよく展開されるので お見逃しなく!
福田 己津央
福田 己津央(ふくだ みつお)
アニメーション監督、演出家。サンライズのロボット作品の多くの演出を手掛けてきている。
主な代表作は『機甲戦記ドラグナー』(演出)、『魔神英雄伝ワタル』(演出)、『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』(監督、絵コンテ)、『GEAR戦士電童』(総監督、絵コンテ)、『機動戦士ガンダムSEED』『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』(監督、演出、絵コンテ)など。
重田 智
重田 智(しげた さとし)
アニメーター。特にメカ系のアニメに数多く参加している。ダイナミックで迫力のある構図が特徴的。
代表作は『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』ビデオシリーズ(メカ作画監督)、『GEAR戦士 電童』(総メカ作画監督)、『機動戦士ガンダム SEED』『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』(チーフメカ作画監督)など。
佐藤 浩一郎
佐藤 浩一郎(さとう こういちろう)
CGディレクター、エフェクトクリエイター。サンライズ作品のCGディレクションやエフェクトを主に担当している。
主な代表作は『SDガンダムフォース』(CGエフェクトスーパーバイザー)、『超劇場版 ケロロ軍曹』(CGエフェクトスーパーバイザー)、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』(CGテクニカルディレクター)など。

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